アルカディアは天に近い

山々に囲まれていて
外からはよく分からない。
霧が舞いかすみがなびき
不可思議なベールが覆う。
果てしなく広い世界の
中心にあるアルカディア、
そこに咲く光を放つ
花々は蛍のようだ。
ちょうちょうは光を曲げて
七色の虹を現す。
あちこちで鳥と鳥とが
集まって歌を重ねる。
泉から湧き出る水は
限りなく澄み切っている。
その水は動物たちを
潤して植物たちを
養って人間たちの
生活の資となっている。
その地では日を覆うほど
たくさんの雲はかからず
雨が降るときも必ず
太陽が輝いている。
太陽は常に輝き
闇に勝ち光を満たし
冬を追い春をもたらす。
柔らかな風がそよいで
暖かな空気を運ぶ。
草花の香りが風に
運ばれて辺りに満ちる。
そこに住む人々は皆
優しさを心に抱き
恨みとか妬みとかいう
感情を露も知らない。
またそこの光と水は
人間に光合成の
やり方を教えてくれる。
したがって彼らは他の
生き物を殺さずいつも
穏やかにほほえんでいる。
山々に囲まれた土地
アルカディア、そこを目指して
勇気ある人は険しい
山々を越えようとした。
しかしその試みは皆
泡となり藻くずと消えた。
アルカディア、そこは心が
美しく清くなければ
行くことができない場所だ。
清らかな心を持てば
肉体を放れたときに
魂が翼を広げ
天近きアルカディアへと
おのずから羽ばたくだろう。

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